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大企業病に陥るプロセスを解明する
2020.10.27

週末はミドルマネジメント層向けに2日連続の研修をさせていただきました。

建て付けはマネージャーのあり方や考え方、各種スキルの習得なのですが、彼らがしっかりマネージャーとして機能することで無為な離職を防ぎ、口コミによる採用が可能になるような環境づくりを意識しています。

その中で「スペシャリストとプロフェッショナルの違いは何だろう?」という問いかけをしました。

その時の反応が面白かったのです。

ご受講の方に「スペシャリストの反対といえばグローバリストと思ってましたが、確かにプロフェッショナルという切り口ありますよね。」というコメントを頂きました。

確かに、ひと昔前までは「手に職をつける」のが励行されていました。

もちろん、今でも手に職をつけるのは大事なことですし、私自身、どうせ行くなら技術の高いお寿司屋さんに行きたいです。

しかし、これからの時代の技術革新やグローバル化、人工知能とか考えると、「何かできる」とか「何かを知っている」って事だけではその強みはすぐに陳腐化してしまいします。

お寿司屋さんだって、これだけ漁業や冷凍冷蔵物流のテクノロジーが発達すれば、鮮度が「売り」になりづらくなってきています。

鮮度だけじゃない「何か」でコンセプトを明確化する。

値段だけじゃない「何か」でブランドを醸成していく。

寿司を握るのが得意だとか、魚の知識に詳しいというだけではこれからの時代、もう生き残っていけません。

早晩、一流店の大将の魚の切り方、寿司の握り方はデータ化され、再現されてしまうでしょう。

実際、コンビニのおにぎりは、あの値段でかなり高いレベルの美味しさを実現していますし、医療業界でも、離れたところからゴッドハンドと呼ばれる医師に手術を受けられる時代になりました。

このような現代、どんなに大きな技術の変化が起ころうと、前提条件がひっくり返るようなことが起ころうと、それでも知恵と勇気で自社、自社商品の強みをお客様に納得していただくよう、喜びを持って切り拓いていくプロフェッショナルという考え方はとても大事です。

企業の中にいると、自分の業務とお客様へ提供している価値が見えにくくなります。大企業になれば、その傾向がより顕著になってきます。

それは、会社のビジョンを実現するための手段としての施策が細分化され、手段が目的化されがちだからです。

そもそも、目的は手段であり、手段は目的になってしまうものです。

  • いい人生を送るために健康になる。
  • 健康になるためにダイエットする。
  • ダイエットするために運動する
  • 運動するために、いいシューズを買う
  • いいシューズを買うために、インターネットで情報を調べる

そうして、インターネットで情報を見ているうちに夜更かししてしまう。

大企業ではインターネットでいいシューズを調べることを「調査業務」と呼んだりします。

ここでしっかり、そもそもの目的を「いい人生を送る」であることを忘れないようにリーダーが啓蒙してくれればいいのですが、いきすぎた結果主義の評価制度下では「何件調査したか」が評価されがちになってしまい、調べることを目的に据えがちです。

これが大企業でよくある「病魔」なのですが、これには次のようなプロセスを看過した結果であるように思います。

KPIはあくまで手段であり目的ではありません。
しかし、行き過ぎた結果主義が実践される職場ではKPIが目的のようになっているケースが散見されます。

これでは、目標達成しても会社に評価されない上社員個人も幸せになれないという2重の不幸が待っています。

企業には成長ステージがあります。

まずは、売れる商品を開発して、目の前のお客様にしっかりと価値を伝えて確実に買っていただくセールスのステージ

次に、まだその会社や商品のことをよく知らない顧客候補が目の前に絶え間なく来ていただけるような導線を作るマーケティングのステージ

そして、どんどん増えていく商品や在庫、お客様、従業員、お金などがビジネスモデル通りにしっかり運用されているかどうか管理するマネジメントのステージ。

大企業病とは、その会社の歩んできたセールスステージやマーケティングステージで手に入れた自社の強みの本質を忘れ去り、マネジメントステージに入って入社した人が主流となってしまって、手法としてのマネジメントを目的化した業務が日常化した状態と言えるのではないでしょうか。

もちろん、「マネジメント」という言葉の定義にもよります。

ただ、このような状態が当たり前になってくると、物を売れる人、マーケティングできる人から辞めていきます。

そのような人は常に市場価値が高いからです。

極端な話、業務には5つしかありません。

  • 新しいお客様を獲得するために会社や商品の魅力を磨くこと
  • 既存のお客様をしっかりフォローすること
  • 単価を上げてでも買いたくなる方法を考えること
  • 喜んでもう一回買ってもらう、ご来店いただく方法を考えること
  • お客様に迷惑をかけずに経費を下げる方法を考えること

企業が事業を通じて、お客様に喜んでいただき、その対価として利益を生み出すものであるとすれば、全ての業務がこの5つの結果にどう役立っているかを常に意識しなければなりません。

もちろん、短期的な戦略か、長期的な戦略か、あるいは、因果関係を狙った戦略か相関係数を狙った戦略かなどにより、目の前の業務と目指す結果の関連性の見え方にムラがあることは
否定できません。

しかし、マネージャーはその全ての業務を俯瞰して各業務や作業がどのような形でお客様のためになっているのか、しっかりとチームに伝え続けなければなりません。

この、業務の意味、意義を伝える力こそが企業に求められるリーダーシップです。

そして、このようなリーダーを育成することが優秀な人材を集め、育んでいく環境づくりの第一歩なのです。